不安について

「不安」は元々、動物が自然界で生きて行くために不可欠な能力です。不安がなければ、弱い草食動物はすぐに肉食動物に捉えられてしまいます。

人間も同じように、不安は本来、自分の身を守るためのものです。しかし、これがひどくなり、パニック発作と呼ばれる動悸・発汗・震え・息苦しさ・めまいなどの症状が起こったり、不安のために仕事や学校、日常生活がうまく送れないようになった場合には、専門家の治療を受けるのが効果的です。

「不安」になる原因にはいろいろなものがありますが、原因がないのに「不安」になることもあります。多くのパニック発作は特に原因がなく起こります。原因があるものとしては、人前で話すことに対する強い不安、汚れたものに触ったのではないかという不安が代表的です。いずれも、過労やストレスがあると、「不安」を感じやすくなりますし、体調が悪いと「不安」を感じやすくなります。

「不安」が強い状態が続いていると、気分の落ち込みや食欲低下、眠れないなどの症状が見られることもあります。その他の病気と同じように、早めに治療を始めることが、早く回復するための近道です。

不安の診察の流れ

STEP1
まず、いつからどのような症状がはじまったのか、どのようなきっかけがあったのか、詳しくお話を伺います。
STEP2
次に、血液・尿検査、心電図などの内科的検査を行います。これは、内科的な病気でも「不安」が強い状態になることがあるからです。また、「不安」の治療には、お薬が効果的なことが多いのですが、人によっては心臓・肝臓・腎臓などに副作用が出てしまうことがあるため、あらかじめ異常がないかチェックが必要です。
STEP3
また、「不安」の程度を測定格や考え方のクセを知るために、心理検査を行うこともあります。 これまでの研究によって、強い「不安」を抱きやすい性格があしたり、ご自身の性ることが知られています。受診される方にとっても、医師にとっても、どのような傾向があるのか、知っておくことは重要です。

不安の治療の流れ

「不安」の治療は、お薬・カウンセリングが主ですが、状態によっては、環境調整もしくは休養が必要となることもあります。

近年、「うつ」の治療に使われるお薬が「不安」にも良く効くことが分かってきましたので、治療の中心はこれらのお薬となることが多いです。ただ、これらのお薬は、効果が表れるまでに2週間ほど時間がかかること、また発作が起きた時の急性の効果がないことから、効果が表れるまで・急性の発作に対しては「抗不安薬」と呼ばれるお薬が使われることもあります。

カウンセリングでは、「不安になりやすい考え方のクセ」や「不安を感じた時にそれを極限まで高めてしまわない方法」などについて、話し合って行きます。症状がやや改善してきた 頃に行うことが一般的です。苦手な場面や場所へ、少しずつ挑戦して行く練習についても話し合って行きます。

また、不安を感じやすいストレス状態になっていないか、を検討し、環境調整を行うこともあります。「不安」がぶり返さないように、職場・家庭・学校などの環境を整えることが大切です。具体的には、過度な負担がかからないような仕組みを作る・周りの人に理解をしてもらう、などです。

また、不安を感じやすいストレス状態になっていないか、を検討し、環境調整を行うこともあります。「不安」がぶり返さないように、職場・家庭・学校などの環境を整えることが大切です。具体的には、過度な負担がかからないような仕組みを作る・周りの人に理解をしてもらう、などです。

お薬について

当院でよくお出しするお薬についてご説明します。いずれも、まず少量(1錠ぐらい)から初めて、副作用がないことを確認しながら増やしていくのが一般的です。
「うつ」の薬が「不安」に効果的である理由は完全には分かってはいませんが、「うつ」の時と同じように、脳の中でセロトニンという物質を増やすお薬がよくつかわれます。 お薬の名前としては、パキシル(一般名パロキセチン)、ジェイゾロフト(一般名サートラリン)、レクサプロ(一般名エスシタロプラム)などがあります。 副作用としては、胃腸症状(吐き気、胃もたれ)などがあります。副作用が出るのは飲み始めが多く、胃薬を一緒に飲むと問題がないこともあります。

「うつ」の薬の効果が出てくるまで、また急性の発作に対しては、抗不安薬が有効です。大きく分けて、短時間作用型、中時間作用型、長時間作用型があります。短時間作用型の代表的なものとして、ワイパックス(一般名ロラゼパム)、デパス(一般名エチゾラム)、中時間作用型はコンスタン/ソラナックス(一般名アルプラゾラム)、レキソタン(一般名ブロマゼパム)、長時間作用型はセパゾン(一般名クロキサゾラム)メイラックス(一般名ロフラゼプ酸エチル)などがあります。副作用としては、眠気・ふらつきといったものが一般的で、お薬をのまれた後の、車の運転や危険な作業には注意が必要です。

うつのくすりパキシル、ジェイゾロフト、レクサプロ
抗不安薬(短時間型)パキシル、ジェイゾロフト、レクサプロ
抗不安薬(長時間型)メイラックス

費用について

「不安」の治療は風邪などの急性の病気とちがい、治療期間が長くなることもあり、経済的な心配も少なくありません。以下に、一般的な治療費についてまとめました。

初診
5,000円 ~ 6,000円
初診料、精神療法、心理検査、内科的検査、処方せん料
2回目から
1,500円 ~ 2,000円
再診料、精神療法、処方せん料

「不安」の診察の流れでお伝えしたように、初診では検査が多くなるために、2回目以降より若干高くなっています。また、当院では、お薬は院外処方となっています。お近くの薬局でお薬をお受け取り下さい。
お薬代は、2週間分で2000円程度です(加入されている健康保険により、医療費の自己負担が3割の場合)。